【人材のプロが徹底考察】副業を認める企業の意図と傾向とは

副業が流行っているが、認めている企業は何のメリットがあって認めているのか?
気になったことがありませんか?
また実際に副業を認めている企業にはどんな企業があるのかも気になるところです。
今や日本政府が副業を推進すべく企業に認めるように訴えかけていますが、企業が副業を認めるのは何も国が訴えかけていることだけが理由ではありません。
そこには時代や求職者の市場変化に基づいた戦略があり、その戦略をいち早く取り入れようと行動している企業こそが副業を認める決断を下しているのです。
国も企業もお金がなければ運営できないことは一緒ですので、問題の本質を辿ってみると副業を認めることは企業にも大きなメリットがあります。
今回は、今の日本がどのような状態なのか、また企業が副業を認める決断をするに至った理由と実際に認めている企業についてお話していきたいと思います。

政府が副業を認める決断を下し、実際に企業に号令を掛けてから時間が経ち、徐々にその熱も活気を帯びてきました。
最初は企業も懸念を示すところが多かったように感じますが、現在では大手企業から中小企業、または自治体に至るまで多くの組織が副業を認める決断を下しています。
副業を認めるということは自社の社員が他の企業でも働いても良い、ということですので、これは今まで自社のために投資してもらっていた時間を他に割くことになり、結果としてだけ見ると売上減少にも繋がっていくと考えられます。
この結果だけ見ると、人材を募集してもなかなか応募が集まらずに人が取れない企業ならまだしも優秀な人材を多く抱えている大手企業も解禁するのはどうしてなのか、そんな疑問に駆られます。
しかし、日本が置かれている市場変化や企業が置かれている現状から将来を見据えてみると、政府の意図や企業が副業を認める理由が明らかになってきます。

政府が副業を認める決断を下した理由、そして企業が副業を認める決断を下した理由は、2つあります。

・人口減少と景気上昇
・少子高齢化

日本は2010年以降、それまで増加し続けていた人口が減少トレンドに変化しました。
1億2千万人いる人口はこれから減り続け、7年先の2025年には既に労働人口がかなり減る試算結果も出ています。
またそれと同時に、リーマンショックから脱したこと、また2020年の東京オリンピックに後押しされ景気上昇トレンドにあることも関係します。
人口が減り、その上で景気が上向くということは、「企業が人を採用したくても採れない状況」を作り上げることに繋がり、結果有効求人倍率は過去最大を記録するまでになったのです。
それに加えて、日本は急激な少子化、高齢化が同時に進んでいます。
これは先進国であれば必ず訪れるフェーズではあるのですが、高度経済成長期に活躍した方々こぞって高齢を迎え、また同時に経済大国となった段階で生まれてきた今の世代はキャリアを志向するために「早い段階で子どもを育てる」人自体が大幅に減ってきました。
「企業が人を採用したくても採れない状況」「早い段階で子どもを育てる人の減少」のダブルパンチが今の日本を襲っており、人手が足りないから採用したいという現状のさらに上をいき、企業が採りたいと感じる優秀な人材は採れなくなっていくでしょう。
そうなると、順調に企業を経営していくことができる企業の数が大幅に減っていき、倒産に追い込まれてしまう会社も出てくることが想定されます。
これを脱するために、企業は副業を認めることで「優秀な人材の確保」を目指す理由があり、
採用できないのであれば確保してしまえばいい、そんな考えで週に3日でも良いので企業に関わってもらうことで危機を脱しようとしているのです。
また副業を解禁することで相乗効果も見込めます。
現在抱えている社員の中には他の仕事も経験することで知識やスキルを伸ばし本業に結びつけることができる人材もいるはずです。
即ち、自社に抱えている企業の可能性を伸ばす手助けをすることで優秀な人材を発掘していくこともできるのです。

・外部から優秀な人材を招き入れやすい
・自社の社員で優秀な人材を発掘する

副業を認めることは外側と内側の両方で将来ほぼ確実に訪れる人材獲得競争に競り勝つ準備をすることと等しく、その市場の変化にいち早く気付いた会社から積極的に副業を認める決断を下しているのです。

もしも、この政府の判断の裏側から読み取ることができる市場の状況と将来の危機を察することができなければ瞬く間に危機的状況に陥ってしまうでしょう。
作業員の確保ならまだしも、経営を支えることができる優秀な人材の確保は人が多い時であっても簡単に行えるものではありません。
増してや、人が減り続け相対的に優秀な人材も減る数年後は、優秀な人材が採れる確率などほぼなくなってしまい、ブランドのある大企業かお金を高く支払う外資系企業にしか集まらなくなるでしょう。
副業を認める企業はこの状況を理解していち早く動いている企業であり、現状と将来を良く見据えて動くことができている企業ということができます。

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現在の市場概況から将来の市場概況を読み解くことで政府の意図を理解する

現在の市場概況を考えたことがあるでしょうか。
市場といっても、この場合は副業に関することですから、人材採用における市場の概況となります。
国は日本を運営するために最適な打ち手を常に考えている機関ですので、一見的外れに見えそうな政策にもその全てに意図があります。
基本は、「As-Is(現状)」と「To-Be(将来)」のギャップを埋めるために今取る施策を常にとることにあるのですが、この「To-Be(将来)」が見えていないと政府の行動は読むことができません。
政府は過去の膨大のデータや、海外の日本より先を行く先進国を参考にしながら、数字をベースとした精緻な将来予測を行っています。
その予測が良い未来であれば、そこに届かせるために今ある問題の解決に動き、悪い未来であればそうならないために今ある問題を解決する、という算段です。

人材採用市場の場合、日本は現在かなり確度の高い未来が予測されている状況です。
今の人口は約1億2千万人ですが、2050年には1億人を割ることが試算されています。
また、人口の40%以上が高齢者となる見通しです。
これにより労働人口も減少の一途を辿り、2030年には現在の労働人口約6,500万人から約14%(900万人)が減少する見通しが立てられています。
単純に働ける人口が減るということは採用できる人数が減るということですし、国という観点から見るとGDPが急激に減少することも指します。
日本のGDPを約3万8千ドルとすると、1ドル=120円換算で1人当たりのGDPは約450万円となります。
働ける人口が900万人減少するということは実質40兆円ものGDPが失われるということであり、この先1人あたりのGDPが急激に改善しない限りは経済的に深刻なダメージとなるのです。

このような背景から「このままでは未来に日本は破綻しかねない」そんな危機感を抱き、政府は1人当たりの生産性をアップすべく副業を認める法案を纏め企業に周知し促進を図っている、というわけです。

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副業を認める企業の意図を理解して自分の将来を描く

この政府の意図に対して、気付いている企業とそうでない企業では対応に大きな差が出ています。
今まで正社員として雇ってきた社員に副業を認めるということは、1日8時間を週に5日間で合計40時間働いてもらっていたのを、減らさなければなりません。
もしも週に3日間に減ってしまえば計16時間作業時間が減るわけですし、そうなると16時間働いてもらっていた分売上が減少してしまいます。
また売上だけでなく、単純に仕事自体が回らなくなる可能性もあります。
そうなると、企業としては当然容認できない事態となります。
しかし、企業が成長するには人材を採用していかねばなりません。
将来ほぼ確実に訪れる人口減少から発生する人材獲得競争を制するには、今のルールや枠組みを取り払って対応を行わねばならないでしょう。
そのことに気付いて、「今いる人材の作業時間減少<外部人材の確保」へと大きく舵を切り副業を認める企業は、日本の将来や政府の意図を理解して柔軟に取り組んでいる企業と言うことができます。
また、副業を行いたい人材は、優秀な人材であるか、または他の分野で成長したい人材である可能性もあるため、副業を認めることで外部より優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。
通常では採用できなかった人材が副業という形であれば採用できるのであれば、副業を認めることで削減された作業時間を上回る生産性を発揮してもらうことで取り戻せるかもしれませんし、むしろ業績が上向く可能性も高くなります。
副業を認めることで社員の意識も変化します。
優秀な社員ほど外部で時間を遣って自身の成長に充てる人材も出てくるはずです。
そうなると、自社にいるだけでは成長できなかった人材が速い速度で成長する可能性もあり、生産性向上に繋がるかもしれません。
故に、「優秀な人材の確保、及び発掘」という観点で、外部からの調達、内部での発掘双方にメリットをもたらす可能性が高いため、副業を認めることはこれからの日本の市場に沿った解決策として有効であると言うことができるのです。

企業が今後これに気付き、メリットを理解したところから続々と副業を解禁していくことでしょう。
その中で自分はどうするのか、個人の意識についても問われてきます。
今までの正社員で働くことの当たり前が崩れてくるので、自分個人のスキル、能力をどこまで高められるのか、そして自分の市場価値をどこまで高められるのかで将来生き残り、活躍できるか否かが決まってきます。
つまり、副業を認める企業が増えてきた今だからこそ、行動し、自分自身の能力開発、スキル獲得のために副業をどんどん実践していくことが求められているのです。

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具体的に挙げられるのは「リクルート」「三井物産」等のIT企業や商社系

現状、まだまだ副業を認める企業は少ないですが、いち早く意図を汲みとって行動を起こしている大企業もいくつかあります。
その代表格としては、リクルートや三井物産などが挙げられます。
傾向としては、業態別にその傾向が強く、IT企業、商社はいち早く取り入れ始めている傾向にあります。
中でもIT企業はエンジニアが今後足りなくなることが確実ですので、フリーランスのエンジニアの活用をどんどん推進していくことでしょう。
IT知識、スキルを習得し、副業を認める企業で副業をしていくことは今一番やりやすい副業ですし、将来的にも自分の市場価値を高めやすい領域であると考えています。

以上のように、副業を認める企業は今後加速していくものと思われますが、自分でも副業することを将来を見据えた上で意識しなければあまり意味がありません。
企業と国の問題として片づけるのではなく、自分自身にも深く関係している問題であることを念頭において行動するようにしましょう。